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「…………!!」

決然と、飛び込むように落ちていくに向かって、八戒の絶叫が響いた。
ジープが、白い矢のように、彼女を追って飛んでいった。
呆然としている八戒に、悟浄が怒鳴る。

「何してやがる!。さっさと片付けて、探しに降りるぞ!」

八戒は、ハッと我に帰ると、いきなり背後の敵に気孔をぶちかました。

「勿論です!。半分はお願いしますよ!」
「言ったな、てめぇ」

先刻よりも更に苛烈さを増した2人の攻撃に、妖怪の絶叫が間断なく響き続けた。







最後の1人を倒すや否や飛び降りかねない勢いの八戒を押し留め、多少斜面のなだらかな所を探してから2人は崖下に降りていった。
崖の下には、小さな湖水が広がっていた。
目を凝らすと、入り江の向こうに白い翼がはためいているのが見えた。その下の岸辺に倒れている人影が1つ。慌てて駆けつけた八戒が抱き起こす。

!。大丈夫ですか?」

頬を軽く叩くと、彼女はうっすらと目を開けた。
八戒は、大きく溜め息をつくと、片手で顔を覆った。

「良かった……。貴女もあんまり無茶しないで下さい」
「……ええ……。御免ね、八戒」

彼女は傍らで羽ばたく、白い竜を指した。

「ジープがね、岸に泳ぎ着くまで引っ張っててくれたの。でも、流石に浅瀬まで泳ぎ着いたところで力尽きちゃって……」

が「有難う、ジープ」と言って頭をなでると、白竜は満足げに、キュー、と鳴い
た。

「ねぇ、八戒」
「何ですか?」
「心配した?」
「勿論ですよ」
「でも、私は生きてたでしょ?」
「…………?」

八戒は訝しげに問い返した。普段の彼女は、彼の傷跡に触れるような事を、滅多に口にしない。
は僅かに微笑むと、辛そうな八戒の顔を包み込むように彼の頬に手を伸ばして囁いた。

「だからね、貴方がどこへ行ってしまっても大丈夫」
「…………」
「私は、貴方をおいていくことは、決してないから」

八戒の生身の左目の奥で、抑えられぬ動揺が揺らめくのが見えた。
彼の傷口に触れる事が判っていても、は言っておきたかった。これだけは。

「貴方が、どこまで遠くに行ってしまっても、私は貴方が好きよ。ずうっとね…」







やっと追いついてきた悟浄にを託し、八戒は、また崖を登り始めた。

「荷物を取って来ます。はそのままだと身体が冷えちゃいますからね」

悟浄は、の肩に上着をかけてやりながら、小声で呟いた。

「……凄かったぜ」
「何が?」
「あんたが飛び降りてからの、あいつのキレっぷり」
「…………やっぱり……」

頭を抱えるの口元が、微妙に綻んでいるのを、悟浄は見逃さない。
彼はニヤリと笑って、指摘した。

「やっぱ、嬉しいっしょ?」

も苦笑し、悟浄を真っ直ぐに見返した。

「悔しいけど……、嬉しいわね。確かに」

どこか晴々とした顔で、彼女は、言った。









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